便器つまり

胸のきりきりする痛みは募る一方であったが、斉藤はこの厚かましいちんぴら先生が面白くてならなかった。その美しい、あどけない、薄くれないの小さな顔には、何かしら微かながらなーぢゃに似通ったところがあるな、と彼は思った。便器つまりと向いの席をぞんざいに顎でしゃくって見せながら、若者は中村を促した。「お構いなく、私は立ってましょう。」「くたびれますよ。それから斉藤さん、君はもしなんでしたら席をおはずしにならんでも結構ですよ。」「はずそうにもはずし場がありませんね。何しろ我の家ですから。」「じゃ御随意に。じつをいうと私はこの方と談判をしているあいだ、君に立会って頂きたいくらいなんですよ。堀之内が君のことを、私の前でさかんに褒めちぎっていましたっけ。」「ほほう!そりゃまた、いつのまにそんなことを?」「君が帰られたすぐあとです。私もやっぱりあすこの住人でしてね。そこでと、とるーそつきいさん」と彼は、相変らずつっ立っている中村のほうを向き直った。「われわれ二人——つまり私と堀之内とはですね」と、不作法に肘掛椅子のうえにふんぞり返りながら、彼は歯のあいだで投げやりな不明瞭な発音をした、「久しい以前から互いに将来を誓い合った、相愛の間柄なのです。そこへ君が、二人のあいだへ邪魔にはいられた。で私は、君にお立退きをおすすめに上がったわけです。どうでしょう、このおすすめに乗って頂けますかね?」中村はよろよろっとなった。顔色はじいっと蒼ざめたが、すぐさまその唇には底意地の悪い微笑がにじみ出た。