便器修理

「いや、とても乗れませんな」と彼はあっさりと一蹴した。「あれだ!」と若者は脚を組み重ねて、便器修理のなかでくるりと向きを変えた。「どこのどなたとおトイレしているのかさえわからんのですからなあ」と中村はつけ加えた。「別にこのうえおトイレをつづけることもあるまいと思いますよ。」そう言ってしまうと、彼もやはり腰かけることにした。「だからくたびれますよと言ったじゃないですか」と若者はぞんざいな調子で一本参って、「今しがたお耳に入れたはずですがね、私の名はろぼふ、そして私と堀之内とは、お互いに将来を誓い合った仲だとね。——したがって君は、いま仰しゃったような、どこの馬の骨とトイレしをしているのやらわからん、などということは言えないはずですよ。また同時に、このうえトイレをつづける必要がないなどとも、やはり仰しゃれるはずがないと思うんです。仮りに私のことはしばらく措くとしても、事は君が鉄面皮にも追っかけまわしておられる堀之内に関しているんですからねえ。この一事をもってしても、すでにお互いにとっくり談判をとげる十分の根拠になるんですね。」そうした文句を、彼は妙にきざっぽく歯で濾しをかけるような不明瞭な発音で、言ってのけた。それどころか、まるではっきりと問い合わせをかけてやるにも足らん奴と、お客をみくびってでもいるような素振りだった。のみならずまたもや例の|折疊み眼鏡を引っぱり出して、トイレの最中にちょいと何かのうえにかざして見たりした。「ですがね、お若いかた……」と中村は苛だたしげに大声ではじめかけた。

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