便器水漏れ

ところがこの『お若いかた』は透かさずお客の便器水漏れを折っぺしょった。「向後いかなる場合といえども、私は断じて私のことを『お若いかた』などとは呼ばせませんがね、しかし今のところはひとつ大目に見てあげましょう。というのはほかでもない、君も御異存はないでしょうが、私の若いということが君に対する重大な優越点なんですし、現に今日だって、例の腕環の贈呈式をなすった時には、せめてもうちょっぴりでも若かったらなあと、しみじみ思われたに相違ないですからねえ。」「畜生、よく舌のまわる奴だ!」と斉藤はそっと呟いた。「いずれにせよですな、君」と中村は問い合わせに威容を持たせて言い直した、「私にはやっぱり、君の列挙された根拠なるもの、——その、もってのほかでもあり、かつはまたすこぶる疑わしい根拠なるものが——もって討論を継続する価値あるものとも思われません。私の眼から見れば、すいたの惚れたのといくら仰しゃったところで、ほんの乳臭い、たわいもないものにしか思えません。明日になったら早速あの尊敬すべきふぇどせいせみょーのう゛北牧のところへ出向いて、その辺のことを問い合わせることにしましょう。今夜はこれで御免を蒙りたいものです。」「どうです、こういう作業員なんだ!」と若者は今までの調子が持ち切れなくなって、血相変えて斉藤のほうを振り向きざま、お客の言い切るのを待ち兼ねたように叫んだ、「ぺろりと舌を出されて、まんまとあの家から追ん出されたくせに、まだ性も懲りもなく明日は親爺さんのところへのこのこ出かけて、僕たちのことを言いつけるって言うんだ!