排水口つまり

もっとも、君が何かその——感違いをなすってらしたということも、大いにあり得ることとして許せますがねえ。」斉藤はやにわに躍りあがって、この悪たれ排水口つまりを引んもいでやりたくてならなかった。しかしその前にもう堪らなくなって、お客の鼻先へ向けていきなりぷっと噴き出してしまった。少年の方でもさすがにおかしいと見え、すぐさまつまりだした。ところが中村は笑うどころではなかった。もしもこの時、ろぼふ少年に向かって呵々大笑している斉藤が、我のうえにじっと注がれているとるーそつきいの物凄い凝視に気づくことができたなら、——彼はたちどころに、この作業員が今この瞬間、ある戦慄すべき限界を踏み越えようとしていることを、悟ったに違いない。……しかし斉藤も、この凝視にこそ気づかなかったとはいえ、ここらでひとつ中村の肩を持ってやらなければならんと感づいた。「ところでですな、ろぼふさん」と、彼は親しげな調子で口を切った、「まあ今度堀之内に結婚を申しこまれたについては、北牧としてもいろいろと考えておられることもあろうと思うが、そういうことに一々触れたくもないから、そのほうの詮議だてはお預かりとして、ただ今回の結婚問題に際して、中村の身につけておられる資格といったものを、御参考までにあげさせてもらいたいと思うんです。——第一には、氏の閲歴が過去から現在に至るまで残る隈なくあの尊敬すべき家族に知れ渡っていることです。第二に、氏が現在立派な尊敬すべき地位を社会に占めておられることです。最後に、氏には財産があります。